『Jip en Janneke』の身近なオランダ語3

オランダの国民的児童文学『Jip en Janneke』からオランダ語を学ぶシリーズです。第3回は「Ze komen thuis met een hondje(They come home with a little dog)」。針を買いにおつかいに出かけたジップとヤネケが、途中で出会った可愛い迷子の子犬(Takkie)を連れて帰ってくるお話です。
ここでは「例文2選の解説と応用フレーズ」と「自力で読むための語彙集」を紹介し、文法や語彙やオランダの文化を深掘りします。著作権の都合上、全文の掲載はできないので、本は図書館やお店で見つけてくださいね。
外部リンク 書籍案内:Jip en Janneke (bol.com)
[概要 / 抜粋文]Auteur:Annie M.G. Schmidt | Serie:Jip en Janneke | Taal:Taal: NederlandsNederlands
外部リンク 読み上げ:Ze Komen Thuis Met Een Hondje
[概要 / 抜粋文]Provided to YouTube by CNR Music (NL) B.V.
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例文2選と応用フレーズ
1.Hij wil mee.
Hij wil mee.
He wants to come along.
🚂 S + V + R (話法の助動詞あり)
前回も mee に拘っていた気がしますが、ここでも mee をとりあげます。mee って、やたら出てくるのに具体的な解説があまりありません。AIに尋ねたって、一筋縄では教えてくれません。ざっくりと「mee は 一緒に という意味」と覚えるのが一般的で、たいていはそれで問題ないからです。それでOKな人は、この先を読む必要がありません、次のエピソードへどうぞ。
私は、ロジックが気になりすぎて先に進めなくなりました。私が学校などの集団授業で置いてきぼりになりやすい理由がここにあり、独学を好む所以です。リトマス試験紙の色が変わったから宇云々の前に、色が変わるリトマス試験紙そのものの構造と色の美しさが気になって授業が上の空になるタイプです。同じタイプの方いますか?mee が出力されるまでの工程を”遡って”みたので、どうぞ、ご覧ください:
- Hij wil mee. (語順:S+Vf+R)
- He wants to come along.
- Hij wil meegaan. (語順:S+Vf+Vb)
- He wants to come along.
- Hij wil met hen gaan.(語順:S+Vf+R+Vb)
- He wants to come with them.
1番(Hij wil met hen gaan. 語順:SVRV)が最も基本的な教科書通りの語順で、要素もそろっているので、第二言語として学ぶ身には、読みやすいです。
2番(Hij wil meegaan. 語順:SVV)では、なにが起きたのでしょうか。これは、met と gaan がくっついて meegaanという「分離動詞」への変身が起きた瞬間です。文脈上、hen こそが重要な情報である場合は1番の文のまま変化しませんが、met と gaan という行動(一緒に行く)にスポットを当てたい場合に meegaan になります。この場合、hen は省略されても文脈から met hen だとわかるストーリー展開(文脈)になっていることがほとんどです。もし met の対象が不明な場合は、それがチョーどうでもいい情報なので知らせる必要がないとか、あえて伏せたいとか、そういうケースです。
3番(Hij wil mee. 語順:SVR)で、ついに gaan まで省略されてしまいました。met とくっ付いて meegaan とか meekomen など「同行」を意味する分離動詞のほか、 meemaken (体験する)などの分離動詞も存在するなかで、mee 以降を省略してしまったら何を言いたいのかわかりません。なので、おそらく、この一文が突然出てくることはなく、たいていは文脈や常識を背景に伴っています。第二言語として学ぶ身には「察しろ」という不親切でしかありませんが、慣れた人同士ではあたりまえの省略なのです。日本語にも、この手の省略がある気がしますね…ちょっと、いまはパッと浮かばないんですが。
ということで、mee を掘り下げました。というか、遡りました。これでようやく、mee で思考停止せず、先へ進めそうです!ちなみに、met のままでは、その対象を省略することはできないという文法上のルールがあります。対象を省略する場合は必ず mee です。
2.‘Kijk, dat hondje loopt met ons mee,’
‘dat hondje loopt met ons mee,’
‘Ga dan maar met ons mee,’
‘that little dog is walking along with us,’
‘Then just come along with us,’
🚂 S + V-front + R
🚂 V-front + R
met ons mee ですって。 ひとつの文のなかに、met と mee が重複しています。
まず、文末の mee は meeloopen という分離動詞の前綴りの mee です。対象を特定せず、犬が「歩くという行動を伴にする」ことに焦点をあてており、dat hondje loopt mee としても成り立ちます。
つぎに、met ons ですが、こちらは対象をはっきりさせて「僕たちと」に焦点を当てています。しかし、ここでdat hondje loopt met ons とすると、文法的には成り立つのですが、情報が不足しているニュアンスが残ります。どういう光景や状態なのか、絵を思い浮かべることができません。極端な例えですが、ons が道具(歩行の補助や踏み台)になっている可能性さえ出てくるのです。
「dat hondje loopt met ons」と聞いたとき、日本語脳や英語脳では「一緒に歩いている光景」が浮かぶのですが、オランダ語脳が処理するときには、その他の可能性も含まれてしまうのです。
これはオランダ語の lopen と英語の walk という動詞の守備範囲(概念のカバー領域)が異なるためです。lopen は walk に比べて抽象度が高く、より広い可能性を含んでいます。それゆえに言葉を足して可能性を狭める、つまり具体性を高める必要がでてきます。
そこで選ばれたのが meelopen という動詞です。lopen では情報が足りないので meelopen が採用され、こちらは分離動詞なので、文になるときには分離される運命です。こうして mee が含まれる文になったところに、同伴の対象にスポットを充てたいために met ons が足されて、dat hondje loopt met ons mee となったわけです。
さて、おなじロジックで Ga dan maar met ons mee を紐解くことができます。こちらで採用された分離動詞は meegaan ですね。Ga と mee に分かれていることが見てとれます。
ちなみに「一緒に歩く」や「一緒に行く」ではなく、「一緒に食べる」の場合はどうなるでしょう。mee をつけなくても、Het hondje eet met ons だけで、不自然さなく成り立ちます。これは eten という動詞の具体性が高く「一緒に食べる可能性大」と認識されているからです。なお、meeëten という分離動詞もあるので、Het hondje eet met ons mee と言う文も可能です。こちらは「犬が後から加わった」感じになります。もちろん、Het hondje eet met de lepel とすれば、met は道具にも適用できます。Het hondje eet met de lepel met ons mee もありです。メルヘンな光景が浮かびますね。
そういうわけで、met と mee の重複の不思議を解きながら、分離動詞の必要性や、分離動詞が文に採用されるときの挙動なども、まるっとおさらいできました!
関連記事 オランダ語の文法
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自力で読むための語彙集
覚えておきたい基本の語彙
hondje (het hondje)
中性名詞、単数形(hond「犬」の縮小辞)
子犬、小さな犬 little dog
grove (grof)
形容詞(屈折変化形)
粗い、大まかな、太い coarse, rough
pruimen (de pruim)
女性/男性名詞、複数形(単数形:pruim)
プラム、西洋すもも plums
allebei
代名詞/副詞
両方とも、二人とも both
achterpootjes (het achterpootje)
中性名詞、複数形(achterpoot「後ろ足」の縮小辞)
(動物の)可愛い後ろ足 little hind legs
vies
形容詞
汚い、不潔な dirty
baas (de baas)
男性名詞、単数形
飼い主、主人、ボス owner, master, boss
oogjes (het oogje)
中性名詞、複数形(oog「目」の縮小辞)
(愛らしい)小さな目 little eyes
schreeuwt (schreeuwen)
動詞、三人称単数、現在時制、自動詞/他動詞
叫ぶ、大声を出す screams, shouts
ruzie (de ruzie)
女性/男性名詞、単数形
喧嘩、口論 quarrel, fight
vergeten (vergeten)
動詞、三人称複数、現在時制、他動詞
忘れる forget
beest (het beest)
中性名詞、単数形
獣、動物(時に見下した表現) beast, animal
gilt (gillen)
動詞、三人称単数、現在時制、自動詞
悲鳴を上げる、甲高い声で叫ぶ screams, shrieks
このエピソードで印象に残る語彙
lapjes (het lapje)
中性名詞、複数形(単数形:lapje)
(布の)切れ端、はぎれ patches, scraps of cloth
wol (de wol)
女性/男性名詞、単数形
ウール、毛糸 wool
naalden (de naald)
女性/男性名詞、複数形(単数形:naald)
針、縫い針 needles
voorpootjes (het voorpootje)
中性名詞、複数形(voorpoot「前足」の縮小辞)
(動物の)可愛い前足 little front legs
mandje (het mandje)
中性名詞、単数形(mand「かご」の縮小辞)
(犬猫用の)小さなかご、ベッド little basket
etensbak (de etensbak)
女性/男性名詞、単数形
(ペット用の)餌皿、フードボウル food bowl, feeding dish
こぼれ話:
犬の「Takkie(タッキー)」は有名キャラクター
オランダの有名デパート(というよりも実際は雑貨チェーンな感じ)「HEMA」では、今でもタッキーのぬいぐるみや子供服、文房具が定番商品として売られています。
ちなみに「Takkie」という名前は、オランダ語で「(木の)枝」を意味する tak からきています。体が長くて茶色い姿が「枝みたいだから」だそうです。
ダックスフンドなのかな?イギリスでは「ソーセージドッグ」って呼ばれてる犬種ですよね。
子どもの「おつかい」と安全基準
本作が執筆された1950年代のオランダでは、近所のなじみの商店(Smitさんの店)へのおつかいは、ごく一般的な日常風景だったようです。オランダは教育先進国であり、子どもの自主性(Self-reliance)を重んじる文化がありますが、現代の法律や社会通念上、幼い子どもだけで街を歩かせることは、ほぼなくなっているように見受けられます。
それでも、幼児をバックフィッツに載せて店外に残したまま買い物を済ませてくる親御さんはたまに見かけます。びっくりして、親御さんが返ってくるまで見守ってしまった私こそが、むしろ不審者のように見えたかもしれません(笑)
うがった見方をすると、子供が乗っているほうがバックフィッツが盗難されにくいのかもしれません。自転車の盗難は日常茶飯事ですが、自転車泥棒は誘拐は犯したくないはずなので。それでも、うちは絶対にできないですが。
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