【解決!】家主が設備の修理義務を果たさないケース

オランダの賃貸物件に住んでいます。
以前、セントラルヒーティングが故障した際に、関係各所が責任転嫁のたらい回しを始めて苦労した経験があります。そして今回は、出産を目前に控えたタイミングでビルトインの食洗機が故障してしまいました。
家主に連絡しましたが応答がありませんでした。家主に修理義務があるだけでなく、テナントが勝手に修理してはいけないという制約のある契約だったので困りました。
そこで法律相談窓口のアドバイスを活用して、「勝手に修理することを正当化」するために行動を起こしました。
すると、これを期に家主の態度が急変し、迅速に修理の手配がなされました。
家主が動いてくれないという絶望的な状況を、思いがけず打破できたので、私たちがとった手段を公開します。
実際に家主に送ったメールと手紙も掲載し、影響があったと思われるポイントもまとめました。
※注意: 賃貸の契約内容によっては、借主に修理義務があるケースもあります。まずはご自身の契約書をご確認ください。契約書の写真をAIに読み込ませて質問すれば、該当箇所を見つけて訳してくれます。
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【状況整理】食洗機が故障、家主が応答なし
食洗機の故障が判明
出産を控えた臨月のこと。ビルトインの食洗機が仕事をしなくなりました。 通電はしており、洗浄完了のお知らせ音も鳴る。けれど、中の食器が全く洗われていない……。
オランダの食洗機トラブルでよくある「塩(Vaatwaszout)」もチェック済みです。
補足:塩(Vaatwaszout)とは?
オランダの食洗機は「硬水」対策のため、専用の塩(Vaatwaszout)の補充が必須です。これが空で動かないだけなら、スーパーで Vaatwaszout を買って補充すれば解決します。
再起動などで修復できないかと淡い期待を抱きつつ、メーカーへ電話で問い合わせました。しかし、「技術者の派遣が必要な故障」であることが判明しました。
修理には家主の許可が必要
そもそも、うちの賃貸契約には「修理義務は家主にあり、かつ、テナントが勝手に修理(手配含む)してはいけない」という制約がありました。
これに加えて、食洗機のメーカーからも「家主本人からの修理依頼じゃないと、技術者を派遣できない」と言われました。
家主に連絡するも応答なし…
わが家の家主はめったに応答せず、義務を果たしません。過去の苦い経験からこれはわかっていました。
案の定、電話をしても留守電。数日待っても折り返しはありませんでした。
※注意: 賃貸の契約内容によっては、借主に修理義務があるケースもあります。まずはご自身の契約書をご確認ください。契約書の写真をAIに読み込ませて質問すれば、該当箇所を見つけて訳してくれます。
誤解のないよう補足すると、オランダの家主や管理会社のすべてがこうではありません。良心的な家主さんに恵まれている知人もたくさんいます。ただ、日本に比べると対応は遅めです。
修理する権利を得るために
使い慣れた食洗機が壊れたまま、産後の未知なる生活を迎えるのは不安でした。 しかも私は「不当で理不尽な扱いに対するストレス耐性」がすこぶる低いのです。妊娠中のイライラは、お腹の赤ちゃんにも良くありません。
このため、わたしに「泣き寝入り」という選択肢はありませんでした。目指すは、食洗機の稼働!
「いっちょやってみっか(無理して、悟空風に)」
不必要に家主を刺激するつもりもありませんでしたが、伝えるべきことは伝えなければなりません。私より語学が達者でも、ゆるい夫には任せていられません。わたし自らが歩み出て率直な意思疎通を試みました。
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【解決に向けて】法に則った手順 + 感情の吐露
無料法律相談所(Het Juridisch Loket)の利用
以前のトラブルで家主に無視された際、Juridisch Loket(ユリディッシュ・ロケット)という公的な無料法律相談所に相談したことがありました。(当時は誰でも無料でしたが、現在は所得制限があります。)
法律のアドバイス要約:
「配達記録付きの手紙を送り、2週間の猶予を与える。それでも反応がなければ、借主が自ら修理を手配し、その費用を貸主に請求できる。ただし、実際に費用を回収できる保証はない。」
無料の法律相談について:
内容: 賃貸契約、敷金、不当な家賃、立ち退き問題などについて、無料で法的なアドバイスを提供。
条件: 低所得・低資産の方が対象。所得制限を超える場合でも、初期の一般的なアドバイスは受けられることがある。
連絡先: 0800-8020(無料)またはウェブサイト。
今回は「費用負担の是非」はさておき、実質的な解決「食洗機の修理」を目指しました。食洗機が稼働すれば解決とするつもりでした。
しかし、いざ行動を起こすと、意外にも家主が全額負担で迅速に対応したのです!送ったメールと手紙は以下の通りです。
配達記録付き手紙(文書)の送付
私の中の論理と感情が錯綜した結果、「法律に則った権利の通知」に「歩み寄り」と「感情」を添えた文書が完成しました。ポイントは以下の通り。
文書の構成
- 法的根拠の提示: 配達記録付き郵便(Registered mail)を送り、2週間の期限を設定。
- 歩み寄り: 「本来はあなたの負担だけど、即対応してくれるなら120ユーロまでこちらで持つ」と提案。
- 実情の吐露: 「無視されるのが怖い」「出産間近で不安」という素直な感情を伝える。
配達証明付き手紙のみでも良かったのですが、より確実にするためにメールも送信しました。実際に送った内容を公開します。
💡ヒント
以下のテンプレをベースに、AI(ChatGPTやGemini)に「私の場合は〇〇が故障していて、○○な経緯があるので、その状況を付け加えて書き直して」などと頼むと、パーソナライズできます。
1. 配達記録付郵便(手紙)
Mr. [貸主のフルネーム]
[契約書に記載されている貸主の住所]
tel.: [貸主の電話番号]
email: [貸主のメールアドレス]
[当該賃貸物件のある市の名前], [投函年月日]
Dear [貸主のフルネーム],
This is a formal notice sent via registered mail regarding the malfunctioning dishwasher at our apartment. As previously reported by phone on [日付], the appliance is not working and requires immediate repair.
1. Our Request and Proposal
We have already contacted the manufacturer, [メーカー名], but they require your direct permission as the homeowner to schedule a technician. Therefore, we kindly ask you to:
Contact [メーカー名] ([電話番号]) to grant them permission to proceed.
Alternatively, please arrange for a qualified technician to visit us at a scheduled time.
To facilitate a swift resolution, we are willing to contribute up to [オファーする金額] EUR toward the repair cost, even though this falls under the landlord’s responsibility.
2. Legal Notice and Deadline
Please be advised that we are strictly adhering to our rental contract, which prohibits us from performing repairs ourselves. However, according to the law, if no effective action is taken by [2週間後の日付], we will be forced to arrange the repair ourselves and will demand full reimbursement from you.
[オプション:3. Our Personal Situation and Concerns]
[独自の事情や経緯があれば記載]
We look forward to hearing from you via phone or email soon.
Thank you for your understanding.
Sincerely,
[あなたの名前] & [配偶者の名前]
Email: [メールアドレス]
Phone: [電話番号]
なお、わたしが独自の事情や経緯として書き添えたのは、以下のような内容です。
- 「失礼だったらごめんなさい」
- 「また無視されるのではないかと不安だったので配達記録付きで送りました」
- 「じつは、出産間近です」
- 「食洗機のある生活に慣れていたので、使えない状態での新生活が不安です」
- 「以前相談したセントラルヒーティングは、バスルームが未修理のまま半年が過ぎています」
- 「バスルームも新生児の入浴のために暖かくできればありがたいです」
- 「契約内容と違わないクオリティの暮らしがしたい」
「困っている、不安だ、こうなったら嬉しい」という切実な事情と感情を伝えることを意識しました。
これは、家主の人情を期待したというよりも、万が一さらなる法的手続きを踏むことになったときに備えて「テナントは家主に対して状況を説明して切実に訴えていた」という証拠を残す考えもあったりしました。
2. メール
Dear Mr. [貸主のフルネーム],
This is [私のフルネーム], your tenant at [賃貸の住所]. Please find the attached PDF. I have also sent a copy of this letter via registered mail.
Summary of our request and offer:
Request: Could you please call [メーカー] at [電話番号] to give them permission to repair our dishwasher? Alternatively, please send a technician to fix it and allow us to make a proper appointment.
Our Offer: To resolve this immediately, we are willing to contribute up to [オファーする金額] EUR toward the repair cost, even though it is the landlord's responsibility.
Response: Please let us know the progress via phone, email, or letter. In the past, we have experienced delays even after being told things would be handled. We want to avoid any further misunderstanding or wasted time.
I apologize if this seems too direct, but please understand that I am genuinely worried about being ignored again, as happened previously. Full details are in the attached letter.
We do not wish to trouble you, but [メーカー] requires your direct permission to proceed. We are also strictly following our contract, which prohibits us from repairing equipment ourselves.
However, if no effective action is taken by [2週間後の日付], we will have no choice but to arrange a repairman ourselves and request a full reimbursement from you, in accordance with the law. We have sent the registered mail to formally notify you of this intention.
Thank you for your time and understanding.
Best regards,
[私のフルネーム]
Email: [メールアドレス]
Phone: [電話番号]
【120%の解決】家主が全額負担で迅速に対応!
手紙とメールを送ってすぐ、意外すぎる結果が待っていました。 あんなに頑固で無視を決め込んでいた家主から、驚くほど丁寧で誠実な電話がかかってきたのです。
家主からの電話:100点満点の回答
電話の内容を要約すると、以下の通りでした。
- 食洗機について:
- すでにメーカーに連絡した。
- 修理予約の調整のため、近日中に電話が行くので対応してほしい
- 修理費はもちろん全額を家主(貸主)が負担するので、請求書が届いたらこちらに転送してほしい。
ほぼ期待していなかったバスルームの件にまで対応がありました。
- バスルームの暖房について
- ずっと未対応だったとは知らなかった、申し訳ない(Sorry!)。
- すぐに業者を派遣する
- 派遣後 → 原因不明で修理不可なので、別の暖房機器を設置する案はどうだろうか?
えっ、別人ですか!? 「100点満点」の神対応じゃないですか。「sorry」も言える人だったんですか。代替案まで提示できる人だったんですか。こんな対応能力を、持っていたんですか?
あんなに気が重かった交渉が、拍子抜けするほどスムーズに動き出しました。家主の言葉通り、メーカーから日程調整の電話があり、修理日が決まり、修理され、費用は家主が全額負担しました。
家主のあまりの変貌ぶりに、「家主さんのプライベートで何か最高にいいことでもあったのか?」と疑ってしまうほどでしたが、もちろんそんな奇跡に頼って異国暮らしなんてできません。
何らかのヒントになるかもしれないので、家主の態度が急変した理由について、心当たりのある3つの可能性を書いておきます。
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【気になる】家主が「善人化」した理由
憶測1:法的通告の威力、あるいは人情?
一つ目は、「Juridisch Loket(法律相談所)」のアドバイスに基づいた通告が効いた可能性です。
単なる「困っています」というお願いではなく、「法的根拠に基づき、2週間後には実力行使(自ら修理して請求)に移る」という毅然とした態度は、家主に「このテナントは無知な外国人ではないぞ」という強いプレッシャーを与えた可能性があります。
一方で、あえて「不安で怖い」という感情を伝えたことで、家主の「防衛本能」ではなく「良心」に訴えかけることができたのかもしれません。
この組み合わせが、家主を動かす決定打になったのだとしたら、わたくしの大勝利でございます。(夫に向かって誇示したい。)
憶測2:「妊婦と赤ちゃん」を守る社会
二つ目は、オランダ特有の社会システムの存在です。 オランダでは、妊婦や乳幼児のケアが非常に手厚く、産後には「クラームゾルフ(産後ヘルパー)」が家庭にやってきます。
もし食洗機が壊れたままで、母親が過度なストレスにさらされているとわかれば、クラームゾルフや助産師が黙っていません。
彼女たちが家主に連絡し、それでも改善されなければ福祉機関へ繋がれる……という展開もあり得るのです。家主としては、そんな「公的な介入」を未然に防ぎたかったという計算もあったのかもしれません。
家主自身、離婚を経験している二児の父親でした。所要のために、子連れでうちに立ち寄ったこともありました。
憶測3:「悪いテナント」という誤解が解けた?
実はこれには後日談があります。 約1年半後、私たちが家を購入して退去することになった際、家主がポツリとこう言ったのです。
「君たちは、悪いテナントじゃなかった。借りてくれてありがとう」
え?
もしかすると、入居中の「不動産屋」の介在によって、私たちは家主に誤解されていたのかもしれません。
入居時に強引な手法で契約を急かしてきた不動産屋は、その後、家主に不利になるミスをやらかしていました。自分たちのミスや不手際を隠すために、私たちを「悪質なテナント」として家主に報告していた可能性も否定できません。
自分の満足ポイントに到達するまであきらめない
この家主との関係性の変化を経て学んだのは、「郷に入っては郷に従い」つつも、「不当な扱いには毅然と、かつ戦略的に立ち向かう」ことの大切さです。
…とか言ってみましたが、不当な扱いにいちいち反応せず、受け流せる心の余裕(あるいは「気づかない」という鈍感力)も、異国で健康に暮らすためには必要かもしれません。うちの夫は、このタイプです。
でも、もしあなたが「どうしても譲れない」局面に立たされたなら。適切な機関に頼り、自分の権利を知り、交渉材料や妥協点を見つけ、相手に届く言葉で訴えてみてください。


